TPPに反対する人々の運動 連続講座 秋季第1回 2014年9月16日

「すでにはじまっているTPP! その実態を撃つ」
「労働政策の改悪の動きと闘い」 東海林智さん(毎日新聞記者)


東海林さんは厚生労働行政を中心に取材報道を行っている立場から、TPP下での雇用政策を説明した。

1)TPPで外国人労働者の流入は増えるかどうかは未知数
安倍政権下では、外国人労働者の大幅受け入れの覚悟はなく、既存の技能研修生制度(最大3年の滞在期間)を利用する形で、日本の労働力の補完という位置づけを続ける。3年以上働くとILOルールにより、外国人労働者がその家族を呼び寄せることが義務づけられるがそれを認めない。

2)投資家の短期的利益増大を目的とした労働政策がまかりとおる
・「雇用の流動化」(「失業なき労働移動」と政府は言い換えた)の中身は、企業にとっての余剰在庫(人あまり)の解消と価格調整(賃金引き下げ)だ。技能労働者維持のための「雇用調整助成金」を減らし、人材派遣業による研修・再就職支援に対する「就労支援金」を増やしたがその結果、「パソナ」(竹中平蔵会長)など人材派遣会社が利益を得ることとなった。
・「岩盤規制」とレッテルを貼り、農業、医療のルールを破壊している。雇用面においては、「限定正社員」という新たなタームを作ったが、非正規社員の限定正社員への登用は限られ、むしろ労働者の家族の介護の必要性などから正社員から限定正社員へ移行することが想定され、逆に正社員自体は「無限定社員」と言った方がよいような過酷な労働を引き受けさせられる状況が生まれるのではないかと思われる。
・成長戦略に「ホワイトカラ-エグゼンプション」を位置づけ、労基法の労働時間規制を除外して残業概念をなくそうとしている。
・解雇の金銭解決という手法は企業の解雇権の乱用につながる。

3)いまTPPの地ならしとして、国家戦略特区設定を含め、こうした労働政策が進められようとしている。その特徴は、外国企業を想定していること、解雇の金銭解決を雇用ルールとすること、ホワイトカラ-エグゼンプションの導入、企業が代わりの派遣労働者に代替することを認めることで、有期労働者本人の無期転換権(5年)を実質的に無効にすることなどである。

4)講演の後、参加者と質疑応答が行われ、次のような議論があった。
・TPP交渉に関して、「連合」は成長戦略に期待して賛成しているが、薬品、食品の有志連合が反対している。
・大企業の海外への拠点の移動では日本へ帰ってくることも起きており、必ずしも海外移転の流ればかりではない。
・TPPが締結されると輸入が増大し、貿易赤字が膨らむこととなる。しかし、企業は単価の安い部品、原材料を活用して利益を拡大しその結果GDPはを拡大するという理屈が、TPP推進派のいうTPPのメリット論だ。
・限定正社員という考え方は、欧米のような「職種による労働契約(ジョブ契約)」という流れになる可能性がある。
・地域社会から見ると、企業の他県への移転も海外への移転も同じことだが、その移転の決断は情報化が進む中で早まっている。
・政府の女性労働者の活用をめぐっては、数値化したい政府と数値化を認めない経済界とのせめぎ合いが続いている。この問題では男性労働者の長時間労働という仕組みから変えていかなければならない。 (記 山浦康明)