TPP連続講座第一回目「ネットでコンテンツをダウンロードしたら訴えられる!?」は大盛況でした!

連続講座「TPPでは生きられない!?―私たちの暮らしは私たちがつくる」の第1回は「TPPの知的財産面での影響」について、福井健策さん(弁護士・ニューヨーク州弁護士・日本大学芸術学部客員教授)を講師に、7月23日に開かれました。その主な内容をまとめました。

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 TPPは今年末の合意をめざしているが、交渉で難航しているのが知的財産権の問題だ。そして米国が最も力を入れているのもこの分野であり、米国の著作権産業の海外収入は10兆円にもなっている。TPP交渉には全米600の企業を特別顧問として参加させ、知的財産権の関係者も多数関わっている。交渉の内容が2011年2月にリークされたが、それは米韓FTAや「日米経済調和対話」と同じであり、米国の姿勢は一貫しているといえる。
 その一つが「著作権侵害の非親告罪化」の適用だ。現在は「親告罪」であるため著作権者などの告訴が必要だが、これが導入されると著作権者が告訴しなくても侵害者に刑事責任を問えることになる。極端には、「ネットでコンテンツをダウンロードしたら訴えられる」ことになる。しかも、日本は小泉改革で「最高で懲役10年又は1000万円以下の罰金」と刑罰が重くなっている。若者を中心にパロディーや同人誌が流行しているが、既に金額的にも大きな分野となっており、また文化や創作を醸成する源泉として重要となっている。「非親告罪化」はこうした動きに重大な影響を与える恐れがある。
 また、著作権の保護期間の延長も出されている。現在は「著作者の死後50年」となっており、特許期限の4倍にもなっている。これをさらに20年延長が図られようとしている。これは「ミッキーマウス保護法」とも呼ばれ、特許が切れそうになる度にハリウッドが圧力をかけて延長を実現させることが繰り返されている。これにより、「古い作品の活用と新たな創作が困難になる」ことが危惧されている。
 知的財産権では他にも、診断治療方法を特許の対象にすることや、医薬品データの保護もあげられている。これにより、患者は特許使用料を払わなければ治療を受けられなくなったり、安価なジェネリック薬がつくれなくなるなど、医療費の高騰を招く。
 これらは、アメリカの制度に加盟国を合わせるもので、アメリカの企業が活動しやすくするものだ。どこまで保護をすべきか、どこから公開するべきか、最適のルール作りが求められるべきである。福井さんは「訴訟社会の米国と日本との違いがあるなかで、「アメリカ型ルールは適合するのか」と問うている。特に条約は国内法に優先することから、TPPに参加すれば、国内制度を大幅に変更せざるを得なくなる。「知的財産権の拡大を目論む者にとってはTPPが最終兵器となる」と福井さんは指摘した。
 しかし、こうした動きに反対する取り組みも広がっている。ヨーロッパでは「模造品・海賊版拡散防止条約」(ACTA)に対し、自由を奪うものとして、ネットなどでの抗議行動が成果をあげ、欧州議会は大差で否決をしている。福井さんは「情報流通を促進しつつ、創作者に収益還元できる制度を考えるべき」と提起を行った。(まとめ・市村忠文(TPPに反対する人々の運動))

<講師>
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福井健策(弁護士/ ニューヨーク州弁護士/ 日本大学芸術学部 客員教授)
いまや著作権などの知的財産権は、コンテンツ・IT産業のゆくえ、ネット・医薬品など私たちの日常生活を大きく左右し、欧米でも国民的論争を招く。TPPでの影響を考える。著書に 『著作権の世紀―変わる「情報の独占制度」 (集英社新書)』『なんでコンテンツにカネを払うのさ? デジタル時代のぼくらの著作権入門 (共著・阪急コミュニケーションズ)』など。