TPPから見える風景-あまりに願望・言い訳に過ぎないか!国会答弁-

TPPに反対する人々の運動
近藤康男

12月4日午前の参院本会議で日米貿易協定・デジタル貿易協定が批准された。今回の臨時国会では衆院で2回、参院で2回委員会を傍聴する機会があった。協定の分量が少ないこともあり、野党の質問は問題点をほぼ網羅し、適切なものだったとの印象を受けた。その一方で茂木外相以下の政府答弁は、これまでになくお粗末・不誠実で、単なる独りよがりの願望と言い訳以外の何物でもなかった。そして願望の中には、文書・文言も無い口頭約束に留まるものもあり、その裏付けとなる記録は最後まで国会・国民に公表されなかった。

今回のコラムでは、12月4日の最期の外交防衛委員会を傍聴していて特に「願望と言い訳」として気になった政府答弁について触れたい。但し議事録からの引用ではなく、傍聴していての理解に基づき言及したもので、実際の発言の文言ではないことを申し添える。

しかし、通商交渉に際しての政府の戦略欠如と腰の引け方を実に表していると思う。

手の内を明かさないのが交渉の鉄則???とは実に空々しい
米国が本格交渉に等しい“対日交渉目的22項目”を議会に通知していることに関連して、では「日本の交渉目的、獲得目標」はあるのか、と問われた茂木外相の答弁は如何?「米国の“22項目”は、優先事項はあるだろうが、米国TPA法に基づく一般的手続きだ」「様々な考えは持っているが、最初から手の内を見せないことが交渉の鉄則だ」と滔々と答弁した。

どうしても護らないといけない事項について、最後の着地点を早計に見せるべきでないのはその通りだ。しかし、この点では18年9月の日米共同声明第5項で日本は「農産品の市場アクセスは過去の経済連携での約束が最大限」、米国は「自動車について自動車産業の製造・雇用の増加を目指す」ことを双方尊重する、としている。つまり、日本は見せてはならないギリギリの防衛ラインを最初から明かし、一方米国は幅広い、青天井の獲得目標をぶつけてきたということだ。最初から勝負は見えていた。

通商交渉は独りよがりではいけない。“政府だけのものではなく、まず国民のもの”だということも言っておきたい。

これも空々しい、米国にTPP復帰のインセンティブはある???

米国との2国間での本格交渉をどうするのか?というこれも戦略を問う質問に対しての答弁は、「米国にとってのインセンティブはある。米国にとって、TPPのメリットは日米貿易協定以上にある」との答弁だ。

そして、牛肉を始めとする緊急輸入制限発動(以下SGとする)の基準数量について、「今回の合意はCPTPPに基づくものではなく、従ってCPTPP参加国には別途協議を働きかける必要がある」と答弁した。“米国のTPP復帰の可否”が確定した段階で、日米貿易協定とCPTPPの基準数量の合計をTPP原協定の枠内に納めることについて、「各国は日本のことを理解しているから問題ない」と繰り返していたCPTPP第6条の見直し条項についても距離を置き始めているかのようだ。そして日米貿易協定(付属書ⅠのB節第四款9項(c)とSGに関する交換公文1項(b))では、「2023年度以降の協議で修正となる場合に1本化することになれば“合意するために協議する”」とされているだけで何の保証もない。“右顧左眄して得るもの無し”にならないのか?

そもそも、掟破りのならず者大統領は常に「2国間交渉が米国にとってベストだ」と繰り返し、その通りに実行し、獲得目標を喧伝しつつその多くを獲得してきた。そして日米貿易協定の署名を控えた12月4日にライトハイザ―代表も「包括協定の議論は計画通り20年に取り組む方針」と改めて示した。また、米上院で通商政策を管轄する財政委員会委員長の共和党グラスリ-委員長も「米国農家の大勝利だ。次は包括的な貿易協定だ」と指摘した。 

日米貿易協定の審議でも、“桜”と同じような政府答弁が繰り返された臨時国会だった。
(JAcomの許可を得て転載)

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