「TPPプラスを許さない!全国共同行動」資料2_日米貿易協定と日本政府を質す

「TPPプラスを許さない!全国共同行動」院内集会資料(1)

日米貿易協定と日本政府を質す
TPPに反対する人々の運動 近藤

1.米国は日本、EUから何を獲得しようとしているのか?
昨年12月21日に米国は22項目の「対日交渉目的」を、1月11日には24項目の「対EU交渉目的」を連邦議会に送付した。その中で日米交渉を「日米貿易協定交渉」と呼称し、その後3月19日の大統領経済報告でも日本とのFTA交渉開始をうたい、3月29日の貿易障壁報告書で広範囲の関税・非関税障壁を列挙している。

EUは1月18日直ちに“交渉指令案”とも言える4つの文書を公表した。しかし日本政府は9月26日の日米首脳会談・共同声明以降、未だに相も変わらず、“物品貿易”などと、誰もが“そんなことはあり得ないだろう”と思うような脳天気な念仏を唱えているだけだ。まずは、TPPの各分野、「対日交渉目的」の22項目、「対EU交渉目的」の24項目を挙げることとする。

 ※3つの表にそれぞれ下線を引いているが、TPPでの下線と「対日交渉目的」の下線はそれぞれ互いにほぼ共通する分野、「対EU交渉目的」の下線は「対日交渉目的」とほぼ重なる分野を示している。
(TPPの前文と30の章)
・前文  ・冒頭の規定及び一般的定義  ・内国民待遇及び物品の市場アクセス  
・原産地規則及び原産地手続き  ・繊維及び繊維製品  ・税関当局及び貿易円滑化
・貿易上の救済  ・衛生植物検疫措置  ・貿易の技術的障害  ・投資  ・国境を超えるサ-ビスの貿易  ・金融サービス  ・ビジネス関係者の一時的な入国  
・電気通信  ・電子商取引  ・政府調達  ・競争政策  ・国有企業及び指定独占企業  ・知的財産  ・労働  ・環境  ・協力及び能力開発  ・競争力及びビジネスの円滑化  ・開発  ・中小企業  ・規制の整合性  ・透明性及び腐敗行為の防止  ・運用及び制度に関する規定  ・紛争解決  ・例外及び一般規定  ・最終規定

(22項目のUSTRの「対日交渉目的」)
・物品貿易  ・衛生植物検疫措置  ・税関・貿易円滑化・原産地規則  ・貿易
の技術的障害 ・規制に関する優れた慣行  ・透明性・(貿易に関する法・諸規則・制度の)公表・行政措置  ・通信、金融を含むサービス貿易  ・電子商取引・国境間データ流通  ・投資  ・知的財産権  ・医薬品・医療機器の公正な手続き  ・国有・国営企業  ・競争政策  ・労働  ・環境  ・腐敗防止  ・貿易救済措置  ・政府調達  ・中小企業  ・紛争解決  ・一般規定  ・為替
Summary of Specific Negotiating Objectives for the US-Japan Trade Agreement(USJTA)
Negotiations 原文へのリンク⇒
https://ustr.gov/sites/default/files/2018.12.21_Summary_of_U.S.-
Japan_Negotiating_Objectives.pdf

 (24項目のUSTRの「対EU交渉目的」)
・物品貿易  ・衛生植物検疫措置SPS  ・税関・貿易円滑化  ・原産地規則  
・貿易の技術的障害TBT  ・規制に関する優れた慣行  ・透明性・(貿易に関する法・諸規則・制度の)公表・行政措置  ・通信・金融を含むサービス貿易  ・電子商取引・越境データ流通  ・投資 ・知的財産権  ・医薬品・医療機器に関する公正な手続き  ・国有・国営企業  ・補助金  ・競争政策  ・労働  
・環境  ・腐敗防止  ・貿易救済措置  ・政府調達  ・中小企業  ・紛争解決  ・一般規定  ・為替
US-EU Negotiations Summary of Specific Trading Objectives原文へのリンク⇒ https://www.lemoci.com/wp-content/uploads/2019/01/190112_ustr_negotiation_objectives_as_transmitted_to_congress.pdf

(1)米国の「対日交渉目的」の眼目は何か
  米国が主眼とするところは、①対日貿易赤字の削減、②米国内の製造業の回復と雇用の
 回復、③TPP離脱で劣後した農産品の対日輸出拡大にある。
更に加えるとすれば、知財など米国が強い分野での権益拡大と、TPPに並行して作成された日米交換文書に込められたものを始めとするTPP以上の利益の確保だろう。
しかし、新NAFTAで実質的に除外された投資家対国家間紛争処理ISDSは、「対日・対EU交渉目的」では含まれていない。
そして「対日交渉目的」には、TPPの30の章とほぼ同じ分野が挙げられている。その中にはTPPを超える内容もいくつか含まれている。まずは最も目立つ「一般規定」と「為替条項」を挙げる。
〇TPPに無くて、「対日(対EUも)交渉目的」に追加された“中国”と“為替”
  「一般規定」には4項目あるが、注目すべきは「日本が非市場国(※筆者注:中国など)と自由貿易協定交渉に入る場合の透明性確保・適切な対応をとるための仕組み」を要求している点だ。これは再交渉後のNAFTAにも追加されたもので、中国と協定交渉をする場合は、“米国にも充分相談をしろ”、ということと理解すべきだろう。あまりに覇権主義的と言ってもよいだろう。交渉中のRCEPや日中韓FTAについては米国は介入するつもりだろうか?
「為替条項」も再交渉後の韓米FTA、新NAFTAに追加されたものだが、これは、文字通りの内容であればほぼ実効性は無いととみてよいだろう。TPPにおいても、当初米国内では、経常黒字の対GDP比など定量的要素を“為替操作国”の要件とし、制裁関税などの強制力を持たせる、という議論があった。しかし、最終的には各国の財務・金融担当相による“宣言”として扱われることとなった。そしてその内容はIMFやG20における内容とほぼ同じ、一般的なものに落ち着いた。
「対EU交渉目的」の為替条項もほぼ上記と同じ内容だ。英文ではEU/日本という呼称
以外は全く同文で、「有効とされる国際収支の調整を妨げ、あるいは不公平な競争優位
を得るために、日本が為替操作をすることがないよう確保する。」(全文訳)となってい
る。
※以下は2015年アトランタでの大筋合意後に発表された“宣言”へのリンク⇒
https://www.treasury.gov/initiatives/Documents/TPP_Currency_November%202015.pdf
ただ、米通商代表のライトハイザー氏は、2月27日の米下院公聴会で、“為替も重要”、“日米貿易協定の緊急性は高い”と拘っている。
〇分野=項目を見るとTPPと瓜二つの米国の「対日交渉目的」と「対EU交渉目的」
  詳細には触れないが、冒頭に載せた表で下線を引いた共通部分を見ると、一目瞭然だ。TPPは「前文+30章」だが、日米では直接的な交渉事にはなり難い分野を除くとほぼ「対日交渉目的」の22項目と同じだ。勿論内容は多少異なる。多少異なるというより、TPPの内容で、合意後も米国議会が不満を持っていた内容や日米交換文書に別途書き加えられている内容(公的保健制度も協議対象に)が、今回日本にぶつけられることを覚悟したほうがいいだろう。
  「対EU交渉目的」の24項目も、個々の内容は「対日交渉目的」と少しずつ異なるものの、挙げられた分野は全く同じだ。その差は、「対日交渉目的」で他の項目と統合されている原産地規則と補助金が独立しただけで、これを考慮すると22項目となる。

(2)項目は同じだが、内容がTPPを超えると想定される分野は?
  トランプ大統領は貿易赤字解消と国内製造業・雇用の回復に非常に拘っている。特に顕著だったのはNAFTA再交渉でのバイアメリカ的な内容の要求⇒確保と同じものをぶつけてくるのではないかと推測される表現だ。
 〇自動車、農産品における自国第一主義
TPPの原協定(当然CPTPPも)では自動車の原産地比率は62.5%とされているが、NAFTAでは70%で合意され、加えて部品の40%以上は時給16ドル超の地域に限る、などを始め米国に有利な規定が追加された。更に自動車について、WTO違反とされる無税での輸出可能数量の規制(加・墨それぞれ260万台)までが加えられた。
“米国産品の輸出につながる原産地規則“という表現は何を意味するのだろうか?日米交渉ではどう出てくるだろうか?   ※原産地規則は、税関・貿易円滑化と共に3つの項目が一つにまとめられている。
  加えて重要関心品目として車・繊維が挙げられ、農産品と車について強調しながら、物品貿易全体について包括的な関税削減と非関税障壁がやり玉に挙げられている。
 〇政府調達における市場開放要求と一方での自国第一主義
政府調達の分野では市場開放を求める一方で、広範な例外措置を求め、更には“バイアメリカン”という言葉が要求として使われている。そして、典型的には、日本がWTO⇒CPTPP⇒日EU・EPAと市場開放の対象を譲歩拡大している地方自治体の政府調達の分野で、自国の州政府については一言も触れていない。ちなみにTPP原協定では、米国の州政府の調達は全て除外されている。
 〇知財分野での反「地理的表示GI」と自国第一主義
日本の農産物の価値を高めるものとしての「地理的表示GI」ついて、“日本独自の地理的表示の保護による米国産品の市場アクセスを不適切に侵すことの禁止”が要求されている。
 〇そして、米国の強みである医薬品については医薬品・医療機器に関する公正な手続きという、TPP原協定では協定でなく日米交換文書に含まれていた事項を敢えて「日米貿易協定」の項目に挙げ、“米国製品の市場アクセスを確保する基準を求める”としている。

  トランプ大統領は繰り返しFFR:Free 自由でFair公平なReciprocal相互的貿易でなければならないと声を挙げているが、「交渉目的」を読む限り、相互的とはとても言えない、米国の一方的な要求でしかないことは明白だ。そして安倍首相の煮え切らない国会答弁は、大阪G20宣言に「公正な貿易ルール」を盛り込みたいとする意欲とは程遠い。

2.敢えて貿易交渉を巡る日・米・EUの立ち位置を問う
“法治(民主主義)”のEU /米国と“人治(閣僚の発言だけ)?”の日本
 米国の「貿易の優先事項と説明責任に関する法」TPA法では、貿易協定の交渉開始90日前までに議会に通知し(日米交渉については18年18月16日に通知)、議会と協力して「交渉目的」を策定し、交渉開始30日前までに議会に送付することが義務付けられている(18年12月21日に送付)。
 曲がりなりにもEU(EU条約など)と米国は法に基づく手続きにより貿易交渉に臨むと共に、それに関わる政府文書を公表し、それに先立って公聴会・意見書公募・(EUでは)市民団体との対話などにより透明性を確保したうえで、交渉方針・目的を策定し、議会に送付している。 
 しかし、日本の場合は貿易交渉を規定する法的担保措置も無く、国会答弁以外には日米共同声明が政府ホームページに掲載されているだけである。そして国会答弁では「関税譲許については過去の経済連携協定が最大」と繰り返えすだけだ。物品貿易協定TAGなる交渉の枠組みへの疑念についても「経済連携協定ではない」、「日米の担当閣僚同士の電話協議で、共同声明が全てと確認している」とのコメントがされているだけである。
※本原稿作成中の4月9日、日米協議に関する関係閣僚会議で4月15~16日の茂木・ライトハイザー両氏の初会合に臨む方針が固められたとの簡単な報道があるだけだ。
戦略も節度も無い日本政府に比べEUは?
その一方で米国USTRの「対日交渉目的」ではTAGならぬ日米貿易協定交渉USーJAPAN Trade
Agreementという呼称が使われ、日米共同声明やTAGへの言及は勿論なく、TPPをも超える要求を「対日交渉目的」に織り込んでいる。通商交渉年次報告書(3月1日)、大統領経済報告(3月19日)も同じ基調だ。
米国はEUに対しても19年1月11日に18年7月の米EU首脳共同声明には言及しないま
ま「対日交渉目的」とほぼ同じような内容の要求を明らかにしている。しかし、EUは、1週間後の1月18日には「対米交渉指令案」で明確に、①交渉範囲を双方の首脳会談の共同声明の範囲に限定し、②共同声明を尊重せずに、EUに対して(日本・EUを含め全世界に追加関税を課した)通商拡大法232条に基づく新たな措置の発動を控えることをしない場合、(対中国に発動した)通商法301条ないしは同様の法律をEUに発動した場合には、交渉からの離脱をする、とうたっている。
 日本政府の姿勢とは全く異なり、しかし国(地域)として極めて当然の対応だと言える。

(1) EU委員会による4件の対米国交渉への勧告文書(交渉指令)一覧
EUは以下の4件の文書をEU理事会に提案し、2月22日にEU委員会に交渉権限を付与することを国際貿易委員会で承認、3月には欧州議会、EU理事会での承認を求めることとなっている(3月下旬時点)。
〇EU委員会の理事会勧告―適合性評価についての米国との協定交渉開始権限に関わる
決定
〇EU委員会のEU理事会宛勧告への付属書(適合性評価についての米国との協定交渉開始
権限に関わる決定):指令
〇EU委員会のEU理事会宛勧告―工業製品の関税撤廃についての米国との協定交渉開始権
限に関わる決定
〇EU委員会の理事会宛勧告への付属書(工業製品の関税撤廃についての米国との協定交
渉開始権限に関わる決定):指令

3.全く!中途半端、戦略が見えない日米経済対話以降の経過
 17年2月の首脳会談で合意し立ち上げられた日米経済対話だが、その後どのような経過、どのような合意がされたのか明らかにされないまま、いつの間にかFFRなる枠組みを経て日米貿易交渉が始まることとなった。以下がその流れだが、日米は通商・投資に関わって何を目指してきているのかはまことに不明瞭と言わざるを得ない。
〇日米経済対話:17年2月10日首脳会談で合意
麻生副総理とペンス副大統領をそれぞれトップに据える経済協議の枠組みで合意。2国間協定の回避と中国牽制を意図したといわれる。
トップ 麻生副総理、ペンス副大統領
枠組み 国内・世界の需要を強化するための相互補完的な財政・金融・構造政策というアプローチ
通商問題ルール作りの主なテーマ 知的財産権、原産地規則、国有企業改革、電子商取引など
経済協力・雇用増のテーマ インフラ整備への投資、人口知能共同研究、サイバーセキュリティや宇宙分野の協力
  その後18年も閣僚・事務方の会合が続いたがいつのまにかFFR(自由かつ公正で相
 互的な貿易)が浮上。
〇FFR:18年4月17~18日、6月7日の首脳会談で合意、茂木経済再生担当相とライトハイザーUSTR代表がトップとなっている。  
〇8月9~10日・日米FFR初会合、前日になっても“議題は宙ぶらりん”、何が協議されたのかもハッキリしない。(18年8月9・10日付日経・農業)
  米国:FTA、自動車、農産物市場、対中対応
  日本:TPPが最善、LNG・防衛装備品輸入、対中対応
〇9月25日午前・FFR第2回閣僚級協議、関税協議へ(18年9月26日付農業、日経)⇒
気が付いたらTAG物品貿易協定へ
〇日米、物品貿易協定交渉入り(18年9月年27日付日経)
  日米両首脳は25日、NYのホテルで約1時間15分会談した。両者は、農産品などの関
税を含む2国間の「物品貿易協定」Trade Agreement on Goodsの交渉開始で合意した。協議中は米国が自動車・部品への追加関税を発動しないことでも合意した。
物品貿易??? FTA?
呼称も内容も中途半端な経過を繰り返して辿り着いた日米交渉だが、安倍首相はじめ日本政府は繰り返し、「物品貿易協定はFTAや経済連携協定ではない」と強調しているが果たして??安倍首相本人が、18年11月5日の衆院予算委員会で自民・山本太一氏の質問に「“農産品などは、私たちの要求以上なら国会を通らないので、出来ない“と大統領に言った」と答弁しているのは国会承認が必要な条約に等しいとの本音を意味しないか?
そして交渉分野を比べれば、誰が見ても物品貿易とは言えない。幸い3月4日の参院予算
委員会で茂木経済再生担当相は、国民民主・舟山氏の日米交渉での情報開示を求める質問に対して、「日本も米国も、交渉途中の段階で同じような形、レベルで国民に説明していきたい」と答弁している。果たしてどうなるだろうか?

4.まさに二律背反の日米交渉と米国のTPP復帰
異形の大統領トランプ氏が世界中を相手に仕掛けた7つの貿易戦争
異形の大統領トランプ氏は、17年の大統領就任以来、世界を相手に7つの貿易戦争を仕掛けてきた。①17年1月23日のTPP離脱、②韓米FTAの再交渉(18年9月30日合意署名)とNAFTA再交渉(18年11月30日合意署名)、③一連の通商関連法の発動としての中国狙い撃ちの通商法301条(18年3月22日)と通商拡大法232条=鉄鋼25%とアルミ10%の追加関税(18年3月23日)+自動車関連の追加関税25%検討、④対EU貿易交渉、⑤日米欧共闘でのWTO改革での対中牽制と、対EU含む9ヶ国とのWTO舞台の提訴合戦、⑥対中貿易戦争とハイテク覇権争い、そして⑦日米貿易交渉だ。
韓米FTAとNAFTAで、望む“TPP以上”と望む“TPPマイナス”を獲得したトランプ氏
 韓米FTAは、朝鮮半島からの米軍撤退の脅しで、18年3月に実質決着し9月30日に合意署名した。
カナダとメキシコの粘り強い抵抗を押し切って、17年8月から9回を超える閣僚級協議の末、集中的な協議でメコシコ・カナダそれぞれを撃破し、18年9月30日に3カ国合意、11月30日合意署名に漕ぎつけた。
詳細は省くが、共通するのは数量規制(韓国からの鉄鋼、加・墨からの車関連)と為替条項。米国からの輸出条件の緩和(韓国産品輸入関税撤廃猶予期間の延長、加・墨との原産地規則と関連条件の引き上げ)などの3ヶ国のブロック経済化、バイアメリカン的な性格の目立つ内容だ。
新NAFTAでは、自動延長条項撤廃やISDS条項の実質的除外、そして非市場経済国とのFTA交渉の米国への説明責任、為替条項なども加わった。
米中貿易協議での対中国の輸出拡大・為替での合意
 中国の“構造的問題”での交渉は難航しているが、これまでに6年間での1兆ドル超の米
国産品の対中輸出拡大や為替問題では合意したとみられている。知財保護・技術移転の強制
でも前進が見られ、先端技術を巡る米中覇権争いに関わる中国の構造問題、合意後の追加関
税撤廃を巡る協議が続いている(4月初め時点)。
対EU,対日本の貿易協議は、“TTP越え”と“TPPマイナス”獲得への道
 EUはともかく、既に日本は“これまでの経済連携協定が限度”と交渉前から白旗を掲げ、実質的に“TPP越え+日EU・EPA越え”を受け入れている。米国は現在2つの多国間協定と12ヶ国とのFTAにより20ヶ国とFTAを締結しているが、中国・EUが加われば、物品貿易だけでも今まで以上に、輸出拡大の可能性を得ることになるし、貿易相手国の規模は圧倒的だ。   一方、米国とFTAを締結していないTPP参加国はブルネイ・マレーシア・ニュージーランド・ベトナムだけで、TPP復帰の意味は小さい。
 そして、対日と対EU交渉目的には、新NAFTA(為替は新韓米FTA、米中にも)にある為替条項と非市場経済国とのFTA交渉の米国への説明責任も含まれている。
 これではトランプ流の“America First”にとってTPPに復帰は不利益でしかないのは明白だ。
トランプ再選無かりせば、ならTPP復帰はあるのか?
 それでは、トランプ以外の大統領ならどうだろうか?まず民主党で名乗りを挙げている候補は押しなべて“TPP的なもの”には忌避感が強いし、前回大統領選で民主・共和双方の候補ともTPP反対を掲げたように、米国社会一般にもTPPを懸念する声が強い。
 更に言えば、米国は未だに原協定(TPP12)の署名国であり、復帰すればこれまで獲得、あるいは今後獲得すると思われる“TPP越え”と“TPPマイナス”の多くをメキシコ・カナダ・日本を含むTPP参加国と交渉し直すか失うか、あるいは原署名国としてTPPをそのまま受け入れるか、という状況が待っていることも想定される。米国はこれまでもcertification processという一方的な卓袱台返しをして合意署名後に協定内容を変更させてきた。しかし、トランプ以外の大統領が、果たして勝手に離脱した後4年も過ぎてから、原署名国の立場で卓袱台返しという行儀の悪いことをするだろうか?

日本政府は、トランプに倣って、首脳合意や“これまでの経済連連携での約束が限度”などという白旗を卓袱台返しをするか、あるいはEUに倣って、場合によっては交渉中断くらいをすべきだろう。
少なくとも、CPTPP(TPP11)第6条の見直し条項発動を各国に呼びかけ、CPTPPと(決着すれば)日米2国間協定並立により12ヶ国のTPP原協定以上の市場開放につながる「牛豚肉の緊急発動制限の発動条件」と「乳製品の低関税枠」を、米国不在の実態を反映するものに変更させることくらいでも急ぐべきだろう。

日米貿易交渉に関する対政府質問
Ⅰ.総括的に
 これまでの日本政府は「交渉に関わるため、明らかにすることは控えたい」という無意味な答弁・回答を繰り返している。しかし、米国(日米交渉)やEU(対米交渉)は、それぞれ法に基づく条約としての手続きをとり、更に交渉に向けた要求・目的・立ち位置を議会・国民に対して明確にしている。しかも公聴会や市民との対話をした上で法的手続きを進めている。
 常に“日米欧”、“価値を共有”と言いつつのこの非対称的な対応は許されてはならないし、日本の国民だけを“つんぼ桟敷”置くことを許す訳にはいかない。
 そして私たちの文書での事前質問に対する不誠実な回答も許されてはならない。国民を代表する政府であるなら、せめてバランス上も米国に倣って、「対米交渉目的」を明らかにするべきである。
1. 国会答弁との関連について
(1)米国の「対日交渉目的」と同じように、交渉目的・基本的な要求などを国会と国民にどのような形、どのような段階で公表するのか。また、交渉は関税交渉か自由貿易協定(FTA)交渉かを明らかにすること。
〇安倍首相は18年11月5日の衆院予算委員会で自民・山本太一氏の質問に対して、「“農
産品などは、私たちの要求以上なら国会を通らないので、出来ない”と大統領に言った」
と答弁したと報道されているが(11月6日付日本農業新聞)、国会承認が必要な条約に
等しいことを示唆しているものではないか?
 〇米国はTPA法に基づき通商交渉上の手続きを取っており、また18年12月21日公表のSummary of Specific Negotiating Objectives for the USーJapan Trade Agreement(USJTA) Negotiations においてほとんどTPPと同じと言える22分野の交渉目的を示している。
(2)国会・国民への情報開示について、どのような内容の情報開示を、誰に対して、どのようなタイミングで行うのか。また国会への報告・国会での審議・承認を行うのか、日米交渉において国会承認を必要としない場合は交渉範囲はどのようなものになるか。
〇茂木経済再生担当相は3月4日の参院予算委員会での国民・舟山康江氏の、日米交渉
での情報開示を求める質問に対して「日本も米国も、交渉途中の段階で同じような形、
レベルで国民に説明していきたい」と答弁している(3月5日付日本農業新聞)
 〇交渉相手国である米国と同じ範囲の内容であれば、“交渉に差し支えるので控える”と
いう言い訳は全く通用しないと言えよう。知らぬは仏=国民、と馬鹿にするのは官僚と
しては許されることではない。
 ・TPPでは、交渉参加以前の段階で、TPPの交渉分野のいくつかについて外務省は問題点
の有無、問題点についてウェッブサイトで公表していたし、重要関心品目である主要農
畜産物については関税撤廃拒否を方針として明らかにしていた。

2. 18年9月26日の日米共同声明との関連について
(1)「市場アクセスの譲許内容」の範囲は「農林水産品の関税」だけか、それとも「農林水産品に関わる非関税障壁」も含むのか。
〇共同声明(「5」)では、「日本としては農林水産品について、過去の経済連携協定で約
束した市場アクセスの譲許内容が最大限」としている。
(2)「非農林水産品」については、「過去の経済連携で約束した市場アクセスの譲許内容が最大限」ということ、また分野の範囲とも関係なくフリ-ハンドで交渉に応じるのか。
〇米国は同じ共同声明(「5」)の中で重要関心品目として自動車を挙げているが、例えば新NAFTAで合意された数量規制なども当然求めてくることもあり得る。
(3)共同声明の「3」の「日米両国は、所要の国内調整を経たのちに、日米物品貿易協定について、また他の重要な分野(サ-ビスを含む)で……、交渉を開始する」とあるが、「所要の国内調整」とは何か。また、「他の重要な分野」や「サ-ビス」にはどのような分野を含むのか。具体的な事項を列挙されたい。
(4)共同声明の「4」の「上記の協定の議論の完了の後に、他の……事項についても交渉を行うこととする」とあるが、「上記の協定」とその後の事項の交渉についてはそれぞれ別個に合意署名をするのか、それとも一括して合意署名をするのか。
(5)米国が日米共同声明の内容を超える要求を出してきた場合は、EUのように交渉離脱を表明する用意はあるのか。
 〇米国の「対日交渉目的」での交渉分野・要求内容はこれまでの経済連携協定を超える
内容が多く含まれるし、「大統領経済報告」でも農産品・工業製品に関わりなく、非関
税障壁・ルール分野も含めてフリーハンドで要求を列挙している。
日米共同声明の内容も超えている。
 〇EUは既に19年1月18日の公表文書で、交渉範囲を米EUの首脳会談の範囲に限定する
こと、共同声明を尊重しない場合は交渉離脱をうたっている。
※Recommendation for a COUNCIL DECISION authorising the opening of negotiations
of an agreement with the United States of America on the elimination of
tariffs for industrial goods 参照 「EU委員会は、米国が18年7月26日の米EU
首脳共同声明での約束を尊重し通商拡大法232条による新たな措置の適用を控える
ことをしない場合、ないしは通商法301条の適用を控えない場合には、協議から離脱
する」

Ⅱ.18年12月21日の米国22項目の「対日交渉目的」との関連で
1. 工業製品特に自動車関連の原産地規則について
(1)工業製品特に自動車関連の原産地規則について、TPPにおける原産地規則以上の原産地比率を許容することはないか。
 〇新NAFTAではTPP以上の原産地比率で合意している。
〇「対日交渉目的」では、既にNAFTA再交渉での意図を反映させ、原産地規則は、“純粋
に”それぞれの国内で製造された製品に利益をもたらすことを確保するものにする、あ
るいは、特に米国に対してインセンティブを与えることを確保する、ことなどを求めて
いる。
 〇譲歩することは、米国のTPP復帰を最善とすることと相反することとなる。
(2)「TBTの項目の中で、“規制に関する優れた慣行”を日米以外の国に対して(求めるべく)調整をする委員会を設ける」としているが、日米以外の第3国に2国間協定交渉の適用を拡大する目的・根拠は何か?
〇多国間協定であるTPP原協定(規制の整合性)でも米国流の規制を拡大する文脈が色濃かったが、「対日交渉目的」のTBTの中で、規制について、“規制に関する優れた慣行”を日米以外の国に対して(求めるべく)調整をする委員会を設ける、とされている。2国間の交渉で第3国をターゲットにすることであり、第3国に対してfair、reciprocalとは言い難い。
(3)投資について、米国の要求にはISDS条項は含まれないが、日本も投資紛争解決の手段としてISDSを求めないのか。
(4)知的財産権について、TPP及び日EU・EPAにおけるGI保護の規定を損ねる可能性はないのか。
〇「対日交渉目的」は、米国の産品の市場アクセスに際して、GI保護に関わる不適切
な仕組みにより妨害をしないよう求め、強くけん制している。
 〇日本のGI農水産品保護を一歩も譲ることがあってはならない。

2. 国有企業・政府支配下の企業について
(1)国有企業・政府支配下の企業について、日本国内の国有企業に対する事業持続のための支援を確保する考えはあるのか。また、米国による自国の国有企業に対する支援についてはどのように考えるか。さらに、TPP原協定と同様、米国の国有企業に対する非適合措置(例外措置)を認めるのか。
〇「対日交渉目的」では、米国内における公共サービスを提供する国有企業への支援を維
持出来るよう求めている。
〇TPP原協定で、米国はTPPの主要な規定を適用しない留保企業を5件(とカウントさ
れると理解した)付属書Ⅳに挙げている一方で、日本は全く留保企業を挙げていない(実
質的には)唯一の交渉参加国だった。

3. 政府府調達について
(1)政府調達について、米国の求めるBuy Americanと同様にBuy Japaneseを対抗的に求める考えはあるのか。また、米国は州政府以下の公共調達については、TPP原協定やWTOの政府調達協定同様、除外を求めることも想定されるが、日本側も同様の除外を求める考えはあるか。
〇「対日交渉目的」では、連邦政府の支援の関わる公共調達についてBuy Americanを調
達の条件とすることを求めている。
 〇日本はWTOの政府調達協定・TPPでは一部の例外規定はあるものの政令都市レベル・主
要な独立行政法人まで原則市場開放をし、日EU・EPAでは中核都市更には県レベルの独
法・公立大学や病院まで対象とするなど米国の立ち位置との間に大きな非対称性がある。

4. 一般規定及び為替(条項)について
(7)一般規定の「中国など非市場国との経済連携交渉についての米国に対する透明性を保証し適切な行動をとる仕組み」の要求と為替条項に対し、日本政府は明確な拒否の姿勢を貫くのか。
 〇いずれもTPPにも日米共同声明にも含まれないが、新NAFTAではいずれも米国の要求通
りになった。
〇「対日交渉目的」の21番目の一般規定4項目中の4番目で求めている“中国など非市
場国との経済連携交渉についての米国に対する透明性を保証し適切な行動をとる仕組
み“の要求は、ほとんど日本に対する「交渉内容の説明義務要求と牽制」とも言える
〇22番目の為替条項もTPPにも日米共同声明にも無いが、ライトハイザーUSTR代表は重
要な事項と位置付けている。