TPPを考えるフォーラム「地域を破壊するTPPは止めよう!」に150人が参加

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「3.9TPPを考えるフォーラム実行委員会」が主催して、東京ウイメンズプラザ・ホールにて上記シンポジウムが150人の参加を得て行われた。

□まず呼びかけ人の「主婦連合会」山根香織会長が開会あいさつで、「秘密交渉を続け、政府がメリットやデメリットも示さないTPP交渉は国民の合意も得られていない。私たちは、グローバル企業中心の社会を作ろうとするこの動きに対して、「地域」を切り口に今日は討議しよう」、と提起した。

□基調講演では京都大学大学院の岡田知弘教授が「TPPは地域に何をもたらすか」と題して、TPPが締結された場合の地域経済・社会への影響をわかりやすく説明した。

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 岡田さんは「TPPをめぐる日米それぞれの政治経済的背景」を振り返った後、TPP交渉が取り決めようとしている分野がサービス、投資などまで広範囲にわたることを指摘し、多国籍企業の資本蓄積欲求に対応した「いっそうのグローバル化」を求めている、と警鐘をならした。
 次に岡田さんは、今日の集会のテーマに沿って「TPPに参加した場合、地域でどのような問題が起こるのか」を説明した。関税が撤廃されれば政府の試算以上に10.5兆円の生産が減少すること、関連産業での雇用への悪影響が見込まれ、その数は190万人の減少となること(これは東京、神奈川、大阪などで著しい)、総じて地域経済を担う産業は「原則無関税化」の衝撃を受けるとした。また非関税障壁による影響も大きいことを指摘した。すなわちその悪影響は、農林水産業のみならず、あらゆるモノやサービス、取引、投資、労働、食品・医療・建築の安全基準にかかわること、医療・金融などサービス市場の開放を求められること、国・地方自治体がおこなう「政府調達」で「国際入札」が求められ、地域社会の仕事が地元企業と外国企業の奪い合いになること、条約が国内法に優越する日本の法制のあり方やISD条項によって国民主権が侵害される恐れがあることだという。
 また、地域社会への影響は「TPPを先取りする安倍流の構造改革」によってもたらされていることだという。アベノミクスの成長戦略を担う規制改革会議、産業競争力会議、財政経済諮問会議はそれぞれ、労働時間規制の緩和、農協・農業委員会制度の改革、混合診療を打ち出したり、医療法人の持ち株会社制度、原発早期再稼働などを打ち出したのである。さらに、3.11被災地に関する「復興特区制度」においては農外資本による水耕栽培(採算がとれず撤退した事例もある)など自然に反した事業、企業的農業だけが短期的に所得向上するしくみなどによって、日本の食料・エネルギー・国土の持続可能性が危機に陥っている、と警鐘をならした。
 さらにまた国家戦略特区による「岩盤規制」の撤廃と資本参入が始まっており、諮問会議や特区区域会議委員となった民間議員が事業者に有利な提案を行い、政策の運用をコントロールしている、と指摘した。これは東京、大阪においては都市再生、医療などにおいて、容積率緩和、外国人医師の登用、保険外併用などが実施され、兵庫県養父市では農業委員会の権限を市長に移管するなどの動きがあり、こうして「世界で一番ビジネスのしやすい環境」をつくろうとしている、というのだ。
こうした事態に対し、岡田さんは、「小さくても輝く自治体フォーラム」に参加する各地の実践例をもとに、医療、保健、教育、産業、雇用、環境、国土保全などを地域で相互に関連させ、問題を解決する地域再生の取り組みが大切だ、と強調した。

□次に、本フォーラムの呼びかけ人でもある、「TPPに反対する弁護士ネットワーク」の中野和子事務局長がコーディネーターとなってパネル討論が行われた。

 まず、全国農協青年組織協議会の善積智晃理事が、「TPPは地域の崩壊をもたらす」ことを強調した。韓米FTAで明らかになったように、TPPにより農産物の低関税化が進めば、国民の命の基となる、食料供給も滞り、それらの安全・安心の確保ができなくなる恐れがある。また安倍首相のいう「地方創生」もそのねらいは大企業の活動を農村に持ち込むことであり、国土保全も立ちゆかなくなるであろう。これは農村社会の崩壊を意味する。国民の理解も得られていない秘密主義のTPPには反対する、と述べた。
 こうした事態に対して、善積さんは、熊本県では「熊本グリーン農業」を推進する条例を作ったり、学校給食の取り組みなどによって、有機農業、農薬を減らす試み、消費者との結びつきなどを試みている、と紹介し、全国でのTPPに対抗する運動の必要性を訴えた。

□福岡県歯科保険医協会の杉山正隆副会長が、「TPPが医療を壊す」ことを強調した。
国民皆保険制度によって、日本国民はいつでもどこでも医療に自由にアクセスできる。政府は表向きはこの制度を堅持するというが、TPPによってこれが実質的に崩壊する。
 具体的には、医薬品の特許保護を強化し先発医薬品メーカーが新薬の臨床データの独占権を持ちジェネリック医薬品が普及しにくくなる、政府の医薬品の保険償還価格の決定に製薬会社を参加させ、価格が米国並みに高騰する、「診断・治療・外科的方法」が特許保護の対象である米国ルールが導入される恐れである。また政府の「国家戦略特区」構想により、すでに混合診療がひろがり金を出せる人だけが良い医療を受けられる流れが始まろうとしている。株式会社の病院参入によって、産科、小児科、歯科を軽視し収益を優先する傾向が高まり、医師・歯科医師・看護師などの免許の相互乗り入れによって、外国人スタッフが参加することで医療の水準の低下の恐れがあるのだ。
 これに対する批判的運動は2011年ごろから国際エイズ会議・学会での患者・感染者・医療者の怒りとなっている、と杉山さんは映像によって紹介した。

□討議では、フロアーから「著作権問題」に取り組んでいる、一般社団法人・インターネットユーザー協会から、TPPで著作権が著作者の死後50年から70年に延長される恐れ、著作権侵害訴訟の非親告罪化の問題点が訴えられたのをはじめ、パネリスト同士でもTPPの問題点が討議された。
□次に、アジア太平洋資料センター(PARC)の内田聖子事務局長が海外の地域から取り組まれている運動を紹介した。米国では連邦議会においてTPA(大統領貿易促進権限法)をめぐって慎重論があり、米国民の間でもTPPフリーゾーン運動も起きている。ニュージーランドでも今TPP反対の一斉行動が盛り上がっている、ということだ。

□最後に本フォーラムの呼びかけ人の一人で「TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会」の醍醐聡さんが閉会のあいさつをおこない、その中で、TPPへの「無関心」というより「無知」が問題だと感じていたが、今日は参加者とともにTPPに関する「知」を磨くことができた。4月の統一地方選挙ではTPPを争点化し、No!を突きつけよう、と訴えた。
(記 山浦康明)