山下惣一共同代表の新刊 『日本人は「食なき国」を望むのか ―誤解だらけの農業問題』

 百姓兼作家山下惣一さんの最新刊が出ました。軽い文体を駆使してとても読みやすいが、奥は深い。この列島に連綿と続いてきた百姓というなりわい、その百姓がつくるむらという場所を丸ごと引き受け、そこから世の中を撃つ、それも深刻ではなくしなやかに、皮肉たっぷりに、という山下節はいくつになっても健在だなあ、と感服しながら読み終えました。(大野和興)

 本書を貫通しているのは、いまの政治や経済、文化を牛耳っている支配層が進めている大規模で効率的な“強い農業”づくり批判です。それはそうでしょう。これが実現するということは、兼業農業、女性農業、高齢者農業を含め、百姓の農業が総退場させられることだからです。代々百姓の末裔たる山下さんは、体を張って阻止すべき使命があります。

 本書の最後の章は、山下さん、ぼく、それに何人かの仲間が連れだって2008年から4年間かけて敢行したメコン川を下る旅の紀行です。延べおよそ50日、中国・雲南からラオス、タイ、カンボジア、ベトナムと歩き、メコンデルタへ。あれからまだ何年も経っていませんが、開発と成長に振り回されるアジア小農世界と日本を重ね合わせる旅でした。

 山下さんは1936年生まれ、ぼくは1940年生まれ。ぼくの方が少し後輩ですが、ともにアジア太平洋戦争の真っ最中に物心がつき、戦後の混乱期を生きてきた世代として、お互いが考えていることがなんとなくわかる気がするのが面白いです。そこで宣伝。山下さんとぼくの対談を収めた『百姓が時代を創る』(七つ森書館)。農の戦後史と今、この列島とアジア、を語りつくしました。面白いです。読んでください。(『消費者リポート』2014年10月号所収)

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日本人は「食なき国」を望むのか
山下惣一著 家の光協会刊(2014年) A5版 1400円+税