「TPPに反対する人々の運動」連続講座 『地域医療と医療制度改革』 問題多い混合診療   高杉進


 『地域医療と医療制度改革』 問題多い混合診療

  「TPPに反対する人々の運動」は7月9日、連続講座「すでにはじまっているTPP!その実態を暴く」の第4回を連合会館で開いた。政府は、新たな成長戦略として、医療では、保険診療と保険外診療を組み合わせる「混合診療」を大幅に拡大することなどをめざしている。これは、地域医療をますます危うくする危険性がある。講座では、長野県佐久総合病院で農村医療の現場に関わってきた高杉進さんに地域医療の現状や、現在進められようとしている医療制度改革の方向について報告をしてもらい、医療とTPPの問題を考えた。

  佐久総合病院は、農業協同組合を母体とした厚生連(全国厚生農業協同組合連合会)病院の一つだ。全国に111の病院があり、日本赤十字や済生会病院よりも数が多い。厚生連は戦前の産業組合の農村医療活動を引き継ぎ、戦後、農村・僻地に手薄な日本の医療制度の問題を克服するために発展してきた。医師はどこにでも開業できる自由開業医制のため、病院が都会に集中しがちなことから、地方の農村では医者にかかれない状態が長く続いた。それを解決するため農協連合会の下に厚生連病院が作られたのだが、近年多くの厚生連病院が地方公共団体に移管され、数も減少してきている。。

  今の現実的な地域医療の問題点として、地方と大都市とでは、医療環境が全く異なることがあげられた。大都市では「セカンドオピニオン」など“医師を選択できる”が、地方ではそもそも医師がおらず選択の余地がない。また、都市の病院だと、医師も定時勤務で、給料は佐久病院の2倍という。これでは、引き抜きも阻止できず、佐久病院でも医師の引き抜きがたびたびあると言う。厚生連病院は、地方の市町村にあるので人口減少の影響もあり、経営が悪化し閉鎖するケースも増えている。

  こうした中で、医療制度改革と国民皆保険制度が問題になっている。高杉さんは、「社会保障制度改革国民会議」(清家篤会長)がまとめた報告書(2013年8月)を紹介。「現在の高齢化・長寿化は、日本の社会保障制度の成功の結果であり、この社会保障制度を守るべき」という内容は、国民への熱いメッセージだと指摘した。
しかし、その精神は捻じ曲げられつつある。特に混合診療の拡大は、「医療の安全や質の保証への配慮を欠いた、実に危ない提案だ」と指摘をした。そのため、医療界ばかりでなく、患者団体や、財政負担を懸念する財務省まで反対をしていると言う。高杉さんは最後に「国民皆保険制度を創ったのは、『医療の民主化』を求めた国民の力だ」と強調した。
(TPPに反対する人々の運動 市村忠文)