ローリー・ワラック(パブリックシティズン):一般教書、TPP、TAFTA

本文:米国大統領が一年に一度上下両院議員総会で政策の方針を述べる一般教書演説(2013 年は現地時間2月12日夜)で、TPPを含む貿易政策と雇用創出について触れました。パブリックシチズンのロリ・ワラック氏による強烈な批判の文章を紹介します。
(翻訳:戸田光子/監修:廣内かおり)

*  *  *  *  *

ローリ・ワラック(パブリックシティズン):一般教書、TPP、TAFTA
(2013年2月14日 ハフ・ポスト・ポリティクスからの翻訳)


オバマ大統領が一般教書演説のピクニックで放した二匹の猛烈なスカンクにお気づきだろうか?

アメリカの雇用を創出する!アメリカの製造業を再建する!アメリカの輸出を増大する! 技術革新を促進する!健康と環境を断固として保護する!環太平洋パートナーシップ(TPP)という11か国のNAFTA(北米自由貿易協定)型「自由貿 易」協定(FTA)-別名(いわば)ベトナムとのNAFTAを決着させ、多国籍企業から長らく要望のあった、重要な消費者保護を排除する欧州との「自由貿 易」交渉、大西洋自由貿易協定(TAFTA)に着手する?

このうち2つは他と異なる。実際、TPPとTAFTAは、アメリカ国民と議会がそれを実現させてしまった場合、オバマの一般教書演説の中にある最も価値ある目標の多くを骨抜きにしてしまうだろう。

誰がそんなことを言っているのか?まず初めに、米国政府の貿易と雇用に関する公的資料 がある。現在発効しているFTAの実施以後、60,000以上の製造工場が閉鎖され、500万人の製造業の雇用が失われた。これは協定実施以前のアメリカ の製造業の雇用の丸々4分の1に相当する。TPPと同様、こうしたこれまでの協定にも、実際にアメリカの雇用を海外に移転する促す投資規則(条項)が含ま れている。

そして、FTA参加国ではない国に対するアメリカの輸出の伸びは、FTA参加国である 国に対するアメリカの輸出の伸びを過去10年にわたり38%上回っている。FTA参加国に対するアメリカの貿易赤字総額は、FTAが実施されて以来、 1,440億ドル以上(インフレ調整後で)増加した。逆に、FTA非加盟国に対する赤字総額は2006年(現行FTAの複数の加盟日のうち、中間の日)以 後、550億ドル以上減少した。オバマ政権の実質輸出対雇用比率を援用しても、また対中国貿易を除いても、FTAの貿易赤字の急増だけで100万人近くの アメリカの雇用の喪失を示唆している。だから、またいつものNAFTA型の協定を結ぼう!だが今度は中国に代わる低賃金のオフショア、ベトナムとだ。

おそらくTPPやTAFTAの売り込みは全く皮肉そのものだ。例を挙げれば、大統領が 2010年の一般教書で述べた、さらに多くの「自由貿易」協定を通過させて米国の輸出を5年で倍増するという目標を(今回)繰り返さなかったことに注目し て欲しい。残り2年となった今、この目標達成への道のりは60%まできていなければならない。ところが、今週末に発表された米国国際貿易委員会の2012 年貿易データ年報によれば、2012年の2%という緩やかな輸出増加率の下では、大統領の目標は2032年まで達成されないだろう。

それに、オバマが昨年の一般教書演説で売り込んだFTAは、約束した数の民間雇用を生 み出していない。それどころか、2012年に発効した、韓国、コロンビア、パナマと結んだFTAの初期段階の成果を探る米国政府の貿易動向資料によると、 FTA発効期間中の数か月間、米国の同3カ国への輸出合計額は2011年の同期比で4%減少した。韓国への貨物輸出は10%激減し、対韓貿易赤字は26% 増加した。この数字はごく最近、一連のNAFTA型協定を結んだ1年目に数千人の米国人の雇用が失われたことと一致する。

実際、石油を除く物品の米国の年間貿易赤字は2012年、6%増の6,280億ドルと なった。これは過去5年間で石油を除いた米国の最高の貿易赤字額である。対中貿易赤字も(石油を入れても)過去の記録をすべて破り、3,210億ドルに 上った。あのオバマのほぼ同じ貿易指針がこんなに効果を上げているのだから、さらに進めたら…

だが、まだある!

TPP交渉は3年間極秘裡に行われてきたが、一方で、知的財産権の章を含むいくつかの 文書が漏洩している。中には、インターネットの自由や技術革新を損なう極端なSOPA(オンライン海賊行為防止法案)型の著作権実施条項も含まれている。 だれが言ったかって?電子フロンティア財団と議会の最も信頼できる「自由貿易」賛成派たちだ。下院監視委員会委員長のダレル・アイサ(カルフォルニア州・ 共和党)から上院貿易小委員会委員長のロン・ワイデン(オレゴン州・民主党)、下院議員のゾイ・ロフグレン(カリフォルニア州・民主党)までいる。

そして、あの大西洋FTAは?これは大西洋間ビジネス対話、つまり金融、アグリビジネ ス、製薬、化学、その他の欧米多国籍企業クラブがお気に入りの計画である。TAFTAの焦点になるのは貿易そのものではないだろう。国境税(関税)はすで に低いのだから。むしろ、こうした交渉が狙っているのは、多国籍企業が呼ぶところの一連の「貿易の癪の種」(非関税障壁)の排除である。ただしそれを私た ちは食品の高い安全性や、環境と健康の安全装置と呼ぶのだが。

その標的とは?大西洋をはさむ両地域が持つ、最強の消費者及び環境保護の規則だ。米国 の企業は、欧州がその優れた化学品規制の枠組み、米国より厳しい食品安全規制および遺伝子組み替え食品の表示や気候変動政策を骨抜きにしたい。(一方、) 欧州の企業は、欧州より厳しい米国の金融規制の枠組み、薬品及び医療機器の安全性、そして検査基準などの側面を狙っているのである。

(翻訳:戸田光子/監修:廣内かおり)