「TPPに反対する人々の運動」

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<<   作成日時 : 2017/07/22 15:22   >>

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TPPに反対する人々の運動
近藤康男

合意ありきの、政治的“大枠合意”
7月6日、予定通りブリュッセルでの第24回日・EU定期首脳協議首脳声明で、日欧EPAの“大枠合意”が宣言された。しかしその声明は、TPPなどが地域の貿易拡大を通じた経済成長や雇用の増加をうたったのと趣を異にし、政治的なモメンタムを強調するものとなった。英国離脱後のEUの不安定化、加盟国ドイツでのG20を目前に控えた日・EUは共に自由貿易の価値をうたう必要があったし、日本は首席交渉官会合を控えTPP11への機運を必要としていた。

合意ありきの政治的“大枠合意”であり、収斂の見えない投資仲裁の先送りを始め、物品関税を除けば、ほとんどが年内合意を目指して最終の詰めを残したままの“合意”だった。

岸田外相とマルムストロ−ム委員が、自民党代表団到着前に、“大枠合意を確信”と宣言したこと、安倍首相が、首脳協議後の記者会見で「国内対策」に言及、続いて農業団体と面会したことに言及して、“出来レ−ス”だとした報道もあった。

政府は、通商協定締結の度に農業政策を作り直すのか?!
安倍首相は7月14日、関係閣僚を招集して「TPP等総合対策本部」の初会合を開き、日欧EPA“大枠合意”を受けて国内対策の策定を指示した。報道で紹介された首相の言葉は、いわく「成長戦略の切り札だ」「保護主義の流れの中で日・EUが自由貿易の旗を高く掲げる」「巨大な経済圏でアベノミクスの新たなエンジンが動き出す」「政府一体となって総合対策を策定する」(7月14日付け日経)。通商協定や経済対策としては違和感を拭い切れない、空虚な(と言いたい)政治スロ−ガンが並んでいた。

筆者は、メディアがアベノミクスという言葉を濫用することは報道としての知的退廃だと思っている。脱線を容赦いただけるなら、マクロ経済学者の浜矩子さんの“アホノミクス”も少々品が無いので、“アベNo!ミクス”、“アベコミックス“と呼ぶことにしている。経世済民と言いうる実績が無いだけに、14日の発言のように、常に“新たなエンジン”を必要とし、手を変え品を変え新たな旗印を立て、“やってる感”を演出しているだけなのだ。

昨年のTPP批准の臨時国会で「TPP関連政策大綱」を策定、今年の通常国会で農業関連の8本の改正法案を通したばかりだ。農業以外では規制改革推進会議は今年も5月23日に答申を首相に提出、5月30日には政府が「未来投資会議」に成長戦略を提示している。この中の極めつけはいわゆる“レギュラトリ−サンドボックス(規制の砂場)”=“企業提案による(地域を問わない})規制の凍結”だ。

日欧EPAの影響を“プラス”に出来るのか?
山本農水相は今回の「大綱」策定に当たって、「対策を打つことで日欧EPAの影響がプラスとなるようにしたい」と語っている。しかし農業分野におけるTPPから日欧EPAに至る交渉と国内対策を改めて考えると、通商交渉における戦略が欠落しているが故に国内対策を策定する羽目となり、またその国内政策が大局観を欠落しているために短期間に再度策定せざるを得ない状況に陥っていると言わざるを得ない。

日欧EPAで目立つ“持続的な再生産を可能にする国境措置を確保した”という政府の説明はあまりに空虚だ。TPPで公表された影響試算の数字が日欧EPAの“TPP並み”で単純に範囲を拡大させ、チーズなどのTPP以上の譲歩が問題を深刻化させることは否めない。脱粉・バタ−の無税枠の設定を、政府は「最近の追加輸入量の範囲内」と説明するが、経営不安による生乳生産の減少による輸入増であることに目をつぶっている。チーズの低関税枠拡大(+16年目に関税撤廃)を政府は「国内消費動向を考慮し、国産の生産拡大と両立できる範囲に留めた」と説明する(いずれも7月6日外務省公表「日欧EPAファクトシ−ト」)。しかしチ−ズ用の乳価は脱粉・バタ−用や生クリ−ム用に比べ加工原料乳としては最も安い。そのためチ−ズ工房は生乳確保が思うように出来ず、生産ラインは頻繁に停止しているとも言われている(7月11日農業新聞)。

ス−パ−でデンマ−ク産のカマンベ−ルが税抜き278円/100gで並んでいたので買ってみた。あまりおいしくなかったが、日本の大手メ−カ−の価格で概ね350円/100g前後、EPA発効前で既に相当の価格差だ。

今回、チーズは“大枠合意”をするためのカ−ドとして最後まで残されたようだが、酪農の現場やチ−ズ生産の現場への打撃を考えると、そのこと自体に怒りを禁じ得ない。
(Jacom掲載原稿を許可を得て転載)

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