「TPPに反対する人々の運動」

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zoom RSS TPPの地政学的重要性:危機にある自由主義経済秩序 ブルッキングズ研究所:Mireya Sol

<<   作成日時 : 2015/03/29 20:43   >>

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 2015年3月13日ブルッキングズ研究所:Mireya Solis氏のTPPについての小論を翻訳チ−ムの戸田光子さんが翻訳しました。 短い文章ですが、簡潔に、米国にとってのTPPの地政学的重要性、一方でTPPが合意されなかった場合の問題、そして、TPAとの関連で議会が新たな地政学的・経済的に負わされるべき責任を展開している興味深い小論だと思います。立場は違いますが、日本での反対運動における視点とも共通する側面もあるとも言えるのではないかとも思います。

 ミレヤ・ソリス氏は2012年9月に“中立・超党派?”のシンクタンクとして世界的にも著名なブルッキングス研究所が日本研究の専門部署を設置した際に研究所のシニア・フェロ−として採用され当該部著の責任者に就任した前アメリカン大学准教授。ハ−バ−ドの修士・博士課程を卒業し、専門は東アジアの比較政治学、通商政策、日本外交と対外経済政策。

  TPPの地政学的重要性:危機にある自由主義経済秩序


 地政学の再来を物語る材料にわれわれは囲まれている。中東の内戦とロシアのウクライナ侵攻がニュースの見出しを占領しているのは言うまでもない。だが、より静かに、潜在的にはより重大な戦略的敗北がアメリカに迫っている=環太平洋経済連携協定(TPP)失敗の可能性だ。なぜ、ほとんど聞いたこともないような通商協定がはかなく崩壊することを心配しなければならないのか? 簡単に言えば、交渉の失敗は、米国の指導力、戦略的地域での重要な連携の深化、新興経済国における市場形成の促進、そして通商政策の未来に壊滅的な結果をもたらすからだ。以下を考慮されたい。

◆米国は国際貿易のルール作りができなくなるだろう

 世界貿易機関(WTO)はこの20年間、貿易と投資に関する新たな多角的ルールを作ることができないでいる。そしてその間、世界をまたにかけるサプライチェーンは国際的な生産および貿易の形態を大きく変えた。 TPPのような大規模な自由貿易協定(FTA)は、21世紀の貿易の現実realities of 21st century tradeにふさわしい新たなルールを提起しようとしているのだ。焦点となっているのは、分散した生産チェーンの効率的管理に欠かせないサービスの自由化(電気通信、交通、など)、対外投資および知的財産権の保護、そして国有企業による略奪的市場行動の回避である。しかしWTOは行き詰まり、各国がさまざまなグループを形成して、経済統合のための基準をそれぞれ定義しようとする分散的競争のシステムに変わってきた。オバマ大統領が警告したように、我々が貿易に関する規則を決めなければ中国が決めるだろう。そして、中国が重商主義的慣行を脱皮するよう促す道が閉ざされることになるだろう。

◆アジアへのリバランス(再均衡)が行き詰る

 TPPは、米国のアジアへのリバランス政策の(軍事的展開の方向転換に続く)第2段階となるものだ。つまり、この戦略が前進するか、あるいはもたつくかはTPPの命運にかかっている。TPPが失敗に終われば、米国の大国としての力に対する疑問が、再び醜い頭をもたげてくることになる。世界で最も活力に満ちた経済地域と確実につながっていくというアメリカならではの政策も無に帰すだろう。TPPが登場する以前、米国はアジアで進む地域主義から取り残されようとしていたことを忘れてはならない。

◆米・日同盟は重要な支柱を失う

 貿易はこれまで両同盟国にとって対立を生む問題だった。TPPが失敗に終われば、米国と日本は農業と自動車の市場アクセスに関する過去の摩擦を乗り越え、21世紀経済の中心となる金融サービスの国際化、知的財産の保護、そしてインターネット経済の管理などの分野に進むことができなくなるだろう。

◆国際貿易の課題は行き詰まりを迎えるだろう

 TPPが失敗に終われば、この時代の最も重要な貿易課題への取り組みは完全に止まってしまう。そうなった時、貿易上の課題を如何にしたら前進させることが出来るだろうか?WTOは制度的にも、大規模な統合的な課題を前進させるのにはふさわしくない。自ら名乗り出た12ヶ国で協定をまとめることができないのなら、ほかにどんな選択肢があるのか。TPP交渉が崩壊すれば、環大西洋貿易交渉が成功するチャンスは大いに減り、東アジアの貿易協定が大規模な統合を果たす可能性も少なくなるだろう。

◆今こそTPPの時なのだ!

 TPP協定妥結への扉は急速に閉じられようとしている。2016年の米国大統領選挙が迫っており、今年は厳しいスケジュールの中で多くの重要な節目になる目標を達成しなければならない。貿易促進権限(TPA)法案の採択、市場アクセス分野の米・日協議の現状打開、TPP交渉の全参加国による大筋合意、そして最終的通商協定の採決である。

 何よりもまずTPAを米国議会において通過させる必要がある。TPAに関して何週間も動きのない週が続けば、通商政策はワシントンの機能不全の政治情勢にも影響されない領域だ、とする見通しも立ち行かなくなる。そして、端的に言えばTPAなしにはTPPはないのだ。TPAの議会通過は通商協定を採決する条件ではない、というのが通常の見解ではある。だが、これは技術的議論だ。TPAの本質的役割は、複雑な通商協定の交渉と批准を成功させるための政治的手段だ、と理解する必要がある。

 国内では、TPAは議会が米国の政策の軌道と目標を定める上で重要な役割を持つ、ということを改めて確認するものである。権限を放棄させるどころか、TPAが通れば、議会は通商政策の目標を設定する責任を保持し、交渉の進捗を評価され、通商協定の運命を決定する最終決定者として行動することになるのである。

 国際的には、TPAは交渉相手国に対し、慎重に推し量り相互に譲歩をした包括協定が、批准段階で瓦解することはないことを改めて確認している。とはいえ、確かに、これまで議会が再交渉を要求してきたこともあり、TPAは信頼性のある仕組みとしては不完全である。それでも、たとえTPAのもつ信頼性がわずかなものだとしても、それがなければ、米国が有利な条件を手に入れることはできないだろう。TPP交渉参加国は、将来あり得るだろう“要求”を純粋に懸念しているか、あるいは、デリケートな問題に対して政治的痛みを伴う譲歩を避けるための完璧な口実を得ることになるからである。どちらにしてもTPAを欠くことはアメリカの通商交渉担当者たちの立場を弱めることになる。

◆TPPが失敗に終わったら、だれの責任か?

 TPPを通過させることはアメリカにとって地政学的、経済的な利益になるだろう。これらの恩恵を得るのに参加国の労働者あるいは規制主権を犠牲にする必要もなく、犠牲にするものでもない。それどころか大規模な自由貿易協定の下では、参加国は(国内で)規制の権利を保持する。というより、協定の目的はより質の高い雇用を創出するために国際的な競争力を高めることにある。

 それにもかかわらずTPPが失敗に終わったら、次なる問題は当然、責任を負うべきは誰か、ということになる。議会は、TPAの可決に失敗すれば、自由主義経済秩序の構築を主導しようとする米国の試みにおいて、足を引っ張ったと言われかねないことを肝に銘じるべきである。

 英語の原文は⇒  The geopolitical importance of the Trans-Pacific Partnership
(翻訳:戸田 光子        監修:廣内 かおり)

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