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zoom RSS 岐路に立つ環太平洋戦略的経済連携協定(TPP) 元通商代表 クレイトン・ヤイター

<<   作成日時 : 2014/06/22 07:46   >>

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 米国の政治家の間に配信されているCONGRESS BLOGに寄稿された元通商代表クレイトン・ヤイタ−氏の、TPPの行方に対する見立てを翻訳チ−ムの小幡さんが訳して下さいました。現状、更には通商交渉というものを大きな枠組みでかつ現実的に捉えようとする元通商代表らしい見方のように思われます。彼の見立てのようにTPP交渉の現実が進むのかは誰も断定は出来ませんが、このところ流布される多くの情報が、各国とも着地点を見出すことを意識し始めていること、しかし最大の不確定要素は米国内政治であり、TPPが着地するには未だ時間が掛る可能性を否定できないこと、を示唆しているように思います。(翻訳:小幡 詩子/監修:廣内 かおり) 

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岐路に立つ環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)
元通商代表 クレイトン・ヤイター(2014年6月6日)

TPP交渉が締結に近づくにつれ、疲労といら立ちがつのり始めている。別に驚くことではない。TPPはこれまでにない野心的な貿易交渉の1つなのだ。うまくいけば、世界の貿易と経済成長を著しく増大させることになる。

オバマ大統領が数週間前に日本を訪問したときの優先議題はTPPだった。2ヵ国の首脳が貿易交渉で意見をぶつけ合うというだけでもいささか怖く、当然、他の10ヵ国の首脳は戦々恐々となった。日本とアメリカという2大国家の合意による恩恵が自分たちにまで及ぶとは限らないのだ。しかし通常、貿易交渉は通商大臣らの管轄であり、国家の首脳たちの関与は限られている。結果として、マイケル・フロマン米通商代表が追及されることになった。日本で一体何があったのか、つまり「フロマン代表がやると有言した通り、進展に近づいたのか」と。

他の10ヵ国の通商大臣たちも、米国の手の内を知りたがっている。特に、米国が日本に対し、時間をかけてもあらゆる関税をゼロにするよう要求し続けるのか、米国が軟化したという日本の報道は本当なのか、という点についてだ。米国の主要な利害関係グループも、とりわけ農産物輸出業者は、同様の質問をしている。

不確実な点がある場合は、最悪のシナリオを想定するのが常だ。しかしその結果、他の参加国は、日米間の自動車及び農産物に関する「ミニ交渉」の結果を待ちつつ、自分たちの切り札を握ったまま、という手詰まり状態になる。同時に利害関係者も焦りや不満をつのらせる。例えば、米国の複数の農業団体は、日本が農産物の段階的関税撤廃に難色を示すのであればTPPから脱退させるのみだ、と主張している。また、攻めと守りの両方で思惑があるカナダは、攻めの戦略(牛肉、酪農製品、小麦、ナタネ)を保留のまま、守りの分野(特に家禽類の肉や酪農製品)では、日本を盾に取っている。

誰もが神経を尖らせているいまこそ、TPPについて何が既に達成され、交渉は(混乱状態は除いて)どこまで来ているのか、進展する可能性のある分野とそのペースはどのようなものか、大局的見地に立って概観する時期だろう。

TPPは「21世紀型自由貿易協定」(より正確には、特恵貿易協定)として策定されたものだが、そうした描写に値するものだ。TPPで取り扱う分野は、かつて行われたいかなる主要な貿易交渉をも凌駕しており、既に環境規制、労働者の権利、知的財産、国有企業、貿易円滑化などの分野でかなり進展している。交渉担当官たちは、「全てが合意されるまで何も合意されない」というルールの下で任務を遂行しており、これまでの成果を口にすることはできない。しかし、それぞれの分野は大きく進展している。

典型的な貿易交渉の議題(関税及び非関税障壁)において、参加国はまず低くぶら下がっている(もぎ取りやすい)果実を摘み取る。しかし、そうした戦略をとると、ほとんど進展がなかった分野も進展があるように見えるというリスクが伴う。その結果、TPPでは交渉担当官たちが、2013年内までの交渉妥結の可能性を示唆することに疑問を持たなかったようだが、これは非現実的だった。結局、この暫定期限を守れないことに対する不満がつのり、米国は非難の的になっている。

幸いにも、我々は再び軌道に乗った。オバマ・安倍会談からのメッセージによると、TPPは、最難関に立ち向かう心構えができている。「大詰め」が近づいており、少なくとも日米両国には、もっとも難易度の高い課題についても、見込みのある「着陸地点」が見えてきた。これは励みになる。今こそ、他の8か国もそれぞれ日米両国との交渉を加速させる必要がある。

2014年内の締結はありそうにない。まだやるべきことは山ほどあるのだから。最も困難な問題を進展させるには、時間がかかる。交渉担当官たちは、もし可能なら今年後半に、さもなければ来年早々にも、交渉を終結させられるよう、今まで以上に懸命に働く必要がある。他の参加国もそれぞれの政治日程があるが、米国の我々にとっては、大統領選挙の年(注:2016年)に、賛否の分かれる貿易問題に取り組むことは望ましい戦略ではない。したがって、この歴史的協定の決着は早ければ早いほど良い。

TPPはあのドーハ・ラウンドではない。何しろドーハ・ラウンドは10年以上の交渉を経てひどく落胆する結果になった。TPPは遙かに推進力があり、参加全10ヵ国にとって上首尾の結果をもたらすのに十二分の勢いがある。一方、米国は2つの障害に留意しておかなければならない。ひとつは貿易促進権限、即ち「ファスト・トラック」権限の必要性だ。米国の交渉チームの交渉力はずば抜けているが、米国ほど権限を持たない交渉担当官もいない。連邦議会はこの状況を、今年が無理なら来年早々にも是正する必要がある。

2つ目の懸案事項は、米国もしくは相手国がTPP交渉を人質に取り、非現実的な要求をするかもしれないということだ。TPPの下で欲しいものを全て手に入れられるわけではなく、それは他の国も同様である。我々は日本側に、あらゆる関税を徐々にゼロにするよう圧力をかけ続けるべきではあるが、そのようなことは起こりそうにもない。(我々自身も実際のところ、自分たちの関税全てを徐々にゼロにするなど気が進まない。)関税ゼロの可能性がない中で、気に入らないからさっさと止めるという議論も、日本を最終合意から外せと要求する議論も、全くばかげている。自ら損失を招くなど、何の特にもならないのだ。最近、遙かに良い取り組み方法がニュージーランドの通商大臣、ティム・グローサー氏によって提案された。グローサー氏は、交渉担当官たちは段階的関税撤廃に相当する貿易自由化の結果を出すべきだと主張した。つまり、関税がゼロにはならない生産物に対して、関税割当制の自由化を利用することを意味している。フロマン特命大使(USTR代表)も最近、最終的包括案では、有意義でより良い、今後も続く、実際的に価値のある市場アクセスを、早い時期に達成すべきであると提案し、本質的に同じ結論に達した。私が通商代表だったころも、レーガン大統領が、3/4のパンでも全く無いよりは常にましだ、と言及し同じことを主張していた。

向こう数か月間に、少しばかりの実利主義と的確な判断があれば、TPPも現実と成り得る。そうすれば、我々米国人もTPP協定の主な受益者の仲間に入ることになろう。

クレイトン・ヤイター氏はホーガン・ロヴェルズ法律事務所の上級顧問で、国際貿易と投資、及び食料と農業問題に携わっている。1985年〜1988年までレーガン大統領政権下で米通商代表を務め、89年〜93年までジョージ・ブッシュ大統領政権下で米国農務長官を務めた。(翻訳:小幡 詩子/監修:廣内 かおり)     

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